本研究の目的は、1)定量的パラメータに基づく動作を定義し、その時の筋電信号を測定する。2)表面筋電を入力、定量的なパラメータを出力とするニューラルネットワーク(以降NNと略す)に対して、初期値の与え方、学習データの選択、結合荷重に対する制約などを工夫する。3)学習したNNに対する解釈を試みる。ことであった。 そこで、動作測定が簡単で、筋機能解釈が比較的易しいと考えられる手関節動作(掌屈、背屈)を対象として、その主動筋と考えられる長掌筋と尺側手根伸筋の直上に電極を配置し、角度計を手関節に取り付けた状態で動作を行ってもらい、筋電信号を測定した。この時、動作の定義として、関節角度だけでなく、関節角速度も動作の定義に組み入れ、関節角速度に変化をもたせるような動作に対して筋電信号を測定した。そして、電極から得られた筋電信号振幅値と、角度計から得られた関節角度、及び、その微分情報である関節角速度を入力とし、関節角加速度を出力とするNNを構成した。このNNに手関節動作時の筋機能を解釈することを目的として、測定データを学習させた結果、単に得られたデータを学習させただけでは、NNから得られる値は実際の関節角加速度とは異なるものとなった。そこで、主動筋の筋電信号振幅値の変化の大きい関節角度で、学習させるNNを代え、関節角度範囲ごとに異なるNNにデータを分けて学習させる方式をとることによって、学習データに対しては、実際の関節角加速度とほぼ同じ値を出力するNNを構築することが可能となった。しかし、未学習データや関節角度をゆっくりと曲げる場合に対しては、異なる値が出力される場合が多くあった。従って、NNの入出力パラメータを増やしたり、NNにデータを分けて学習させる方式を他の方式に代えるなど、さらに学習方法を工夫しないと、筋機能をNNに完全に学習させられないことがわかった。
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