研究概要 |
本研究はアリストテレスの「分析論後書」の翻訳と註解からなる。この書物の詳しい説明は『序文』に譲るが、J.バーンズの印象的な表現を借りるなら、「この書物は、いかなる理由にせよ、哲学の歴史のなかで最も優れた、独創的で影響力のある作品のうちのひとつである。それは科学哲学のコースを--また或る程度科学そのもののコースを--千年間にわたり決定した」と形容されるものである。(J.Barnes,Aristotle Posterior Analytics,xiv,Clarendon Press Oxford 1994)今日は科学技術の時代であると言ってよく、生活のすみずみにいたるまで、その恩恵と制約のもとにある。科学そして科学的知識というものが、その起源において、いかなるものとして理解されたかを知ることは、今日の状況を作り上げているものをその源泉から理解し、省察することを促うように思われる。本研究においては「分析論後書」の全翻訳を提示し、註解としては私の「分析論後書」について研究である"Aristotle on Explanation ; Demonstrative Science and Scientific Inquiry Part I,II"(北海道大学文学部紀要 72号、pp.1-110、73号、pp.1-95)の関連箇所を指示する。詳細な註解の執筆は今後の課題としたい。
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