研究概要 |
本研究は,事故や迷子といった,子どもの生存に直結する彼らの空間対処能力という重要な自律能力の不全について,その実態を質問紙調査と実験から心理・行動学的に検討しようとするものである。 まず事故の研究については,あわせて4種類の質問紙調査と2種類の実験が行われた.その結果,質問紙調査からは,子どもの事故は3歳で多発するが,大事故に関しては0歳にも大きなピークがあること,通常の事故は屋外で転んで足を怪我するというものが大部分であるのに対し,大きな事故は家の中で起こりやすく,上半身が関与しがちであること,とくに誤飲や熱傷が幼少期に起こりやすい大事故であり,大事故は大人の保護の目があっても起こりうることがわかった.実験からは,4歳児において障害物の回避に失敗が多いが,5歳児は慎重になることで失敗を免れていること,障害物が静止した能動的回避と障害物が近づいてくる受動的回避では回避行動に大きな質的差異があることなどが明らかにされた. 一方迷子の研究においては,1319人に対する調査から,迷子が,43%の子どもに発生し,3歳で最も多く発生し,男の子の方が女の子よりもなりやすく,ほとんどは大型小売店で発生していることがわかった.迷子の発生する原因を特定するために4歳児に実施された実験からは,迷子の有無とおもちゃの家でのパフォーマンスに明らかな関係はほとんど認められなかった.こうした結果は,迷子発生の原因が複雑な要因に基づくためであろうと考察された.
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