研究概要 |
1.52名4ヶ月児とその母親が本研究の対象として1年間に渡り2回の家庭訪問及び2回の実験室観察に参加した。子どもの気質・行動特徴は質問紙と観察データによる評定を用いて調べ、親の養育行動、特に児に対する情動反応や情動制御を相互交渉場面の観察で測定した。母親の捉え方として、児の気質特徴のなかで「なだめられ易さ」がもっとも得点が高く、続いては「注目・注視」、「微笑み・笑い」、「活動性」、「制限に対する不機嫌」の順で、もっとも低いのは「新奇性に対する慣れ」であった。母親は概して自分の子どもの機嫌を「なだまり易い」と捉えている。7ヶ月時児の気質・行動特徴の組み合わせとして、「活動性」が高くかつ「なだまり難い」ものは8名、また、「活動性」が高くかつ「制限に対する不機嫌になり易い」ものは5名が同定された。11ヶ月時これらの子どもとその母親の実験室の相互交渉において、子ども自身の情動制御や児に対する母親の制御の傾向が必ずしも一定なパターンを示さなかった。乳児期の子どもの気質特徴と養育者の行動特徴との関連は予想より複雑のようである。 2.50名の子どもを20ヶ月時(実験室)及び3歳、4歳時(質問紙)に観察・調査した。実験室では、情動喚起場面(恐れ、怒り、快)における子どもの情動的表出・反応を観察した。観察に先立って母親に児の反応を予測させた。質問紙(CBQ)は活動水準、接近・注意の焦点化、衝動性、行動制御など16の尺度が測定された。3歳時はCBQを郵送により送付し回収した。4歳時は実験室での観察の際に母親によって記入された。CBQの16次元と実験室における恐れ・怒り・快との関係いついて相関がみられたのは恐れ(実験室))*怒り(CBQ)(負の相関)、快(実験室)*恐れ(CBQ)のみである。又、恐れ(実験室)知覚の敏感さ(CBQ)は関連する傾向がみられた。実験室気質測定の得点とCBQの因子分析により得た上位5次元の得点との関係は全くみられなかった。怒り(実験室)*刺激への敏感さ(CBQ)は関係する傾向がみられた。次に、実験室気質測定と母親の報告(4歳)の関係において、恐れ(実験室)*知覚の敏感さ(CBQ),怒り(実験室)*行動制御(CBQ)(負の相関)にみみられたのであった。また、恐れ(実験室)*行動抑制(CBQ),怒り(実験室)*知覚の敏感さ(CBQ)(負の相関)は有意ではないが関連する傾向がみられた。最後に、実験室気質測定の得点とCBQの因子分析により得た上位の5次元の得点との関係の中、恐れ(実験室)*刺激への敏感さ(CBQ)のみが有意な相関であった。
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