研究概要 |
貧困概念の歴史的変化を検討した後、物質的な貧困が見えなく(invisible)になっている現代では「社会的不利益」を貧困と見る今日的考え方が導きだされた経過を跡付ける作業をおこなった。 ついで、社会的階層の再生産理論について、ブルデューを始めとする欧米の先行研究を概観した。 そして現代社会における貧困の再生産現象を検討し、今日新しい身分としての「貧困階層」がむしろ固定しつつある傾向を指摘した。 養護施設入所を現代的貧困のひとつの現れとすえる考えに基づいて、養護施設経験者の児童が養護に欠ける状態に陥り、養護施設に入所する実態やその要因を明らかにしようとした。 最後に養護施設入所のサイクルについて調査を行い、その結果を分析した。内容としては養護施設入所のサイクルはだいたい4,5パーセントの頻度で出現し、母親が養護施設経験者の方が児童が再び養護施設に入所する比率が高いこともわかった。これは集団養護の形態は女児を養育するには見直す必要がある形態であることを示している。しかし、養護施設現場ではこの問題に関する意識はまだ低いことなどがわかった。
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