本研究において、以下に述べる研究の成果を得た。 1、近世史料の中でも、弘前藩の津軽家文書にみえる十三湊並びに十三町方の関係史料を主に調査収集した。とくに寛文元年から明治初年に至る約3000冊の弘前藩庁日記(弘前市立図書館蔵)の中から、十三湊と十三町方関係史料を網羅的に調査し、関係記事を摘録しかつ翻刻した。 2、中世から近世にかけての日本海海運の中で、十三湊と関係の深い、越前・能登・越中・越後の各諸湊、並びに佐渡の諸湊に関する史料調査を図書館・文書館などで実施し、関係自治体史などに収録されている海運史料を収集した。 3、国立歴史民俗博物館の「青森県十三湊遺跡・福島城跡の研究」プロジェクトに参加し、十三湊遺跡、福島城遺跡の調査に協力した。その中で歴史考古学的な知見を得て、考古学の研究者との間で文献史料と遺物資料の関係について意見を交換した。 4、東京大学史料編纂所において、津軽安藤氏、蠣崎氏、檜山安東氏、根城南部氏の関係史料を主に影写本を中心に調査し、更に十三津波伝承に関しても主に青森県・岩手県・福島県の関係史料と各謄写本を調査収集した。 5、中世の北方世界を題材にした和歌を、古代から中世にかけての、新古今和歌集をはじめとする和歌集から採録して、文学と北方日本海世界について考察した。 6、以上の調査成果を基づいて、『国立歴史民俗博物館研究報告』第64集に、「近世十三湊に関する基礎的考察」と題する論文を発表した。
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