研究概要 |
本研究は、冷戦解消後の国際社会における国際連合安全保障理事会の活動を国連憲章第七章の観点から批判的に検討することを目的とした。具体的には、(1)湾岸戦争におけるイラクに対する制裁の発動そして武力行使の容認決議(決議678)の採択、(2)イラク北部におけるクルド人救援のための介入(決議688)、(3)人道救援活動に従事する平和維持軍への限定的な武力行使の許可(ソマリア、旧ユ-ゴ)、(4)旧ユ-ゴにおいて国際人道法の重大な違反を犯した個人を訴追するための国際裁判所の設立(決議808)、(5)ロッカビ-事件におけるリビアへの制裁の決定(決議748)における国際司法裁判所と安全保障理事会との権限関係等の多様な問題を対象として、研究を進めてきた。 研究の進展に伴い、憲章第七章、さらには国際連合憲章自体の性格をどのように理解し、その解釈理論をどのように設定するかが、中心問題の一つになっていることがますます明らかになってきた。その意味で、この研究を英語で発表するためには、本研究を応用・適用とすればその基礎に当たる解釈理論自体を英語で発表しておく必要性を痛感してきた。そのため、本研究と並行して、本研究の基礎・土台ということができる『国際組織の創造的展開』(勁草書房、1993年)の英語への翻訳・加筆の作業にかなりの時間を投入することに変更し、Evolving Constitutions of International Organization(Kluwer Law International,1996)として出版できた。 本研究自体は上記の事例に示されるように安全保障理事会の多様な活動を対象として進めてきているが、発表された具体的成果としては、今のところは、平和維持活動の変容・展開の問題に限られている。研究発表欄の論文は、平和維持活動の変容を包括的に検討しようとしたもの。口頭発表は、国際人道法の観点から検討したものである。
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