研究概要 |
本研究の目的は、我々の宇宙が物質(バリオン)ばかりで占められており、なぜ反物質(反バリオン)がほとんど存在していないのか、という物質起源の問題に深く関わるCP対称性の破れについて現実的な加速器による実験で検証する方法を理論的に考察することであった.この目的の遂行のために現在の素粒子標準模型を超える新しい物理が存在する場合に,それがB中間子系におけるCP対称性の破れの測定実験においてどのような影響を与えるかを系統的に調べた. 標準模型の未知パラメータである小林・益川行列要素の決定にはB中間子工場での実験により、いわゆるユニタリティ三角形の辺の長さと3つの角度を決定することが必要であるが、それらへ新しい物理がどう影響しうるかを調べた結果、新しい素粒子模型一般の場合について,大部分の模型においてはユニタリー三角形の角度の測定値の和の180度からのずれは微小であるこを発見し、角度の和が180度よりずれるためには新しい物理がbクォーク崩壊へ直接寄与しなければならないことを示すことができた.この結果は近い将来のB中間子工場での実験による新しい物理の探索において、角度の測定だけでは不十分で辺の長さに考慮する必要があることを意味しており、重要な意義をもつ、角度の和が180度にならない具体例として、右巻きカレントに結合するWボゾンが存在する模型をとりあげ詳しい解析を行った。その結果新しいWボゾンが1-2Tevと重くてもユニタリティ三角形の決定に大きな影響を与えうることという興味深い結論も得た。 また,B中間子の物理に対して、その現状と現在建設中のB中間子工場での実験、および今後10年で達成される実験精度を比較し、今後研究すべきポイントを示唆した.
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