研究概要 |
本研究の目的は、これまでほとんど測定のなされていない低エネルギー領域でできるだけ沢山の衝突系における反応断面積の絶対測定を行い、関連分野の基礎データニーズに答えることにある。本研究期間中には、Ar^<q+>(q=6,7,8,9,11)-H_2,Heの衝突系における1電子および2電子捕獲反応断面積の系統的測定により分極力による衝突軌道が曲がる効果の重要性、および、その効果は1電子捕獲過程より多電子捕獲過程に大きな影響を与える可能性を見出した。この予測に基づき、標的を2電子の水素やヘリウムから多電子系のNeに換え、入射イオンにAr^<q+>(q=6,7,8,9,11)およびKr^<q+>(q=7,8,9)多価イオンを使用して衝突エネルギーを関数に1電子および多電子捕獲反応断面積を系統的に測定した。その結果、何れの衝突系においても多電子捕獲過程の反応断面積は極小構造を示す特異なエネルギー依存性を示し、多電子捕獲ほど極小構造がより深くなり高エネルギー側にシフトしていく一般的傾向を見出した。解析によりこの現象は分極力による散乱効果によることが解明できた。また、平行して進めていたHe^<2+>-O_2,N_2,CO衝突系の電子捕獲反応断面積測定では、衝突エネルギーの減少とともに主要反応が1電子捕獲反応から2電子捕獲反応に入れ替わってしまうなど、これまでのデーターから予想できない数々の新しい知見を得ることができた。さらに、長年に渡り蓄積してきた低エネルギー反応断面積の相当数の測定データを本研究期間中に整理し、関連分野の基礎データとして資するため成果報告書に取りまとめることができた。
|