研究概要 |
従来の地球磁気圏モデルは通常、オーロラ帯を含む高緯度領域に低エネルギー(1-10keV)プラズマ粒子の一様(単位磁力管あたりの粒子数について)な分布を仮定する。オーロラ帯の極側領域(領域1と呼ぶ)がオーロラ活動の主舞台であるにもかかわらず、「その領域のプラズマ自体は電荷分離をせず(エネルギーの解放がないことを意味する)、磁力線再結合、粘性相互作用などの境界層の物理過程がオーロラ活動や領域1の沿磁力線電流発生の主原因になり得る」と前提するというのが従来の考え方であった。研究代表者は、「惑星間空間磁場が南向きの場合には、開いた磁力線の領域(極冠域)での(惑星間空間への)プラズマ流出を考慮すれば、低エネルギー粒子がオーロラ帯に集中して分布する'トーラス配位'が可能であり、太陽風によるトーラス配位変形が領域1及び2の沿磁力線電流発生を引き起こす」という新しいパラダイムを提唱している。プラズマのトーラス配位、交換型の不安定を引き起こすという理由から、準安定な分布には成りにくいというのが従来の考え方ではあるが、トーラスの極側境界付近の磁気ドリフトの逆転層、低緯度境界層の圧力勾配などを考慮すれば、状況は一変し、トーラス内部は不安定でも全体としての形状は保たれ得ると予想される。また、太陽風プラズマ粒子の磁気圏内への流入及び開いた磁力線に沿っての粒子の流出の過程の中でのトーラス形成、いわば'代謝'をするトーラスは、オーロラ帯の種々の現象-領域"0,1,2"の電流系、ディスクリートオーロラ形成、ディフューズオーロラのオメガバンド構造-をそれ自身の自然な形態として実現することが予測される。この予測を理論的に実証することが、本研究の数値シミュレーションの目的で、オーロラオーバルの諸現象を系統的にモデル化して、領域"0+1+2"の合成電流系やオメガバンドについては、人工衛星観測のデータと矛盾のない計算結果を得た。
|