研究概要 |
結論:本研究によって得られた重要な新知見は以下の2点である. (1)重複急冷縁岩脈の発見 (2)重複岩脈の形成条件 (3)重複岩脈は島弧火山・低速拡大海嶺で生じやすく,高速拡大海嶺では生じにくい 重複急冷縁岩脈:火山体の地下浅所に貫入した岩脈の好露頭のある,伊豆大島筆島火山,北部八ヶ岳旧期火山岩類,小笠原諸島父島,地中海東部のキプロス島のトル-ドスオフィオライト,アラビア半島東端オマーン国北部のサマイルオフィオライトについて野外調査を行った. その結果,重複岩脈の一方の側にある急冷縁が繰り返す間隔が1cm〜20cmと非常に薄ものが,筆島・八ヶ岳・トル-ドスオフィオライトに広く存在することが確認された.これを重複急冷縁岩脈と称する.このような岩脈はマグマの貫入が短い間隔で繰り返されたことを示唆するものである. 重複岩脈の形成条件:トル-ドスでは重複急冷縁岩脈の出現は深成岩体の近辺に限られ,層序的に上位のシート状岩脈群には見られなかった.以上のことから,これは,重複岩脈の形成するための必要条件として,1)マグマ貫入がパルス状に発生する,2)パルスの発生間隔/岩脈の固結時間(F/S比)が大きい,が考えられる. トル-ドスvs. オマーン:オマーンではシート状岩脈群は全て単純岩脈で,1m以下が最も多い.重複岩脈が島弧火山下,低速拡大軸のトル-ドスにあって,高速拡大軸のオマーンにないことから,オマーンでは1)マグマパルスは発生しなかった,2) F/S比が非常に高かった,の可能性が考えられる.また,パルスの発生は供給マグマの体積/マグマ溜りの体積に支配されている可能性がある.
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