研究概要 |
植物細胞の伸張方向は、時事刻々と変化する環境情報に従って間期表層微小管が配向することによって制御されている。シクロヘキシミドで蛋白質合成を阻害すると短時間のうちにこの表層微小管が細胞質に移行する事から、我々は表層微小管を細胞膜と結合する因子の中に代謝回転の速い蛋白質が存在し、光屈性などで見られるように時事刻々と変化する情報に対応して微小管の配向を変化させていると考えている(Mineyuki et al. 1994,Plant Physiol. 104,281-284)。光屈性では特定の光受容物質を介して情報伝達が行われているため、微小管の配向制御は照射する光の波長によって影響を受ける。そこで、本研究では表層微小管の細胞膜との結合の安定性が光条件で変化するかどうかを調べることを目的として研究を行った。 暗所で4日間育てたタマネギ実生を白色光下でシクロヘキシミド処理を行うと、根端2mmの分裂組織にある間期細胞ではほとんどすべての細胞で表層微小管が細胞質に移転する。まず、青、緑、赤、近赤外光などの異なる光条件下で、タマネギ実生にシクロヘキシミド処理を行った場合、根端分裂組織の間期細胞の微小管が細胞表層にどの程度保たれているか調べた。その結果赤色光下で行った実験では、他の光条件下での実験に比べ表層微小管の細胞質への転移が遅くなることが示唆された。様々な照射条件を検討した結果、シクロヘキシミド処理前に1時間光処理を行ったもので、赤色光下と暗所での表層微小管を持つ細胞の割合の差が一番大きくなった。光屈性の際の微小管の配向変化にフィトクロムが関与しているという最近の報告(Zandomeni and Schopfer, 1993,Protoplasma, 173,103-112)もあるので、この結果が、フィトクロムの関与によるものがどうか、今後調べていきたいと思っている。
|