研究概要 |
分化の基本骨格は,主としてある特定遺伝子の転写レベルの制御にある。この転写レベルの制御には,転写因子と呼ばれる一連のタンパク質が関与し,中でもステロイドホルモンのレセプターをはじめとする核内レセプターは,分子内にZnフィンガー構造をとる特徴的なタンパク質であり,金属であるZnが重要な役割を担っている。一方,メタロチオネイン(MT)は正常組織でもZnクラスタータンパク質として存在することが知られ,核内のレセプターとの間で何らかの機能関連が推測される。そこで,本研究では核内に出現するMTがいかなる働きをしているかを明らかにするために,正常ラット下垂体を用いて,各種ホルモン産生細胞とMTとの共存を免疫組織化学的手法および in situ hybridization法を用いて調べた。60日齢雄ラット1匹当たり5000〜9000個のGH細胞を調べたところ,0.44±0.15%の細胞の核においてMTが陽性であった。一方他のホルモン産生細胞においては,どの細胞もMTが共存している像は認められなかった。ラットGH産生細胞株であるMtT/Sに,E2,EGFおよびinsulinを複合作用させると,24時間目に急激にMTが発現し,それと時を同じくしてGHmRNA陽性細胞は有意に(p<0.01)減少し,PRLmRNA陽性細胞は有意に(p<0.01)増加することから,正常ラット下垂体における核内MT陽性GH細胞は、PRL細胞に変化する前段階の細胞である可能性が示唆された。現在胎仔期の下垂体GH細胞およびPRL細胞とMTとの関連を調べている。
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