研究概要 |
組織中にある細胞の蛋白質輸送を小器官特異的に阻害し、機能蛋白質の輸送経路を明らかにするために、Rab蛋白質を利用して研究を行った。まず、10種のショウジョウバエRab蛋白質の全長cDNAをクローニングし、蛋白質の一次構造を推定した。次に、これらを大腸菌で発現させ,その抗体を作成して、細胞内局在を検討するとともに、DRab1,DRab2,DRabRP4について、それらのGTP結合部位に変異を導入したcDNAを作成した。このcDNAを鋳型として生体細胞内で変異蛋白質が発現されるよう、UAS/GAL4系を含む形質転換ショウジョウバエを構築し、変異蛋白質の発現による視細胞の形態変化と視物質輸送の阻害について検討した。その結果、DRabRP4の形質転換体では明らかな視物質輸送の阻害は観察されなかったが、DRab2の形質転換体では、視物質の成熟過程の後期で僅かな阻害が認められた。しかしながら、大部分の視物質は通常の成熟ロドプシンとして光受容膜に輸送されることから、DRab2が視物質輸送の後期で機能している可能性があるものの、その機能が他の蛋白質により補償されうるか、あるいは、DRab2が関与しない他の輸送系が並行して存在する可能性が示唆された。これに対して、DRab1の形質転換体では,ロドプシンの成熟がごく初期の段階でほぼ完全に阻害され、高マンノース型の大きな糖鎖を持った未成熟ロドプシンが蓄積することが明らかになった。また、形態的には、ゴルジ体の消失が見られ、更に長期間の阻害ににより光受容膜が著しく退化することがわかった。これらの結果は、DRab1がショウジョウバエ視細胞において粗面小胞体-ゴルジ体間での小胞輸送に関与しており、全ての視物質がこの経路を通って輸送されていることを示している。また、DRab1の変異体でもラミナの視細胞軸索には大きな変化が見られず、同じ視細胞でも部域によりDRab1の阻害に対する感度が異なることが明らかとなった。
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