研究概要 |
(1)素過程の研究 負性抵抗・発光を示すフォーミング素子として,平面上に電極を配置したプラナー型と絶縁膜をサンドイッチしたM-I-M構造とがあるでは,電圧印可を繰り返すフォーミング過程で,プラナー型では亀裂が生じ,その中に微粒子が存在すること,M-I-M構造では絶縁体膜中に金属微粒子が形成されることが知られている.面上に分布した微粒子を経た電気伝導において,選択的な線上の電気伝導経路が有り,その経路の一部が,印可した電界に逆行する場合には,負性抵抗が生ずるモンテカルロシミュレーションで示した. (2)発光現象の観察 発光過程での基本的なパラメータを把握するために,光学顕微鏡下で構造が観察しやすいプラナー型で発光現象を観察した.厚さ約7nmの金を蒸着した低抵抗膜をフォーミングした結果,特徴的な負性抵抗を示し,発光も観察された.本年度の設備費で購入したマルチチャンネル検出器を用いて発光スペクトルを観察した. (1)印可電圧との関係:印可電圧の増加とともに発光スペクトルのエネルギーは増加したが,印可電圧相当以下であった.ピークは印可電圧によらず720nm付近に存在した.強度は電流にほぼ比例した.これらの実験事実より,ギャップ中の電流経路の数により電流,発光が決まること,電流経路中に電界が大きい場所が2カ所以上存在すること,発光が主に熱的な理由による可能性が強いことがわかった. (2)雰囲気ガスとの関係:微粒子を経た伝導過程のみならず,Pagniaらが主張している電流経路の生成破壊が負性抵抗に寄与している可能性を調べるために,アセトンを真空中に導入し,アセトン分圧による発光スペクトル,強度の変化を調べた.その結果,アセトンを導入することにより,電流及び発光強度が増加することがわかった. (3)発光機構 アセトン雰囲気での発光強度の増加などから,微粒子を含めた曲率半径の小さな場所に成長するカーボンの生成・破壊で負性抵抗を説明するPagniaらの主張も根拠があることがわかった.発光スペクトルから,熱的な要因も考えられる.さらに系統的な実験を続行中である.
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