超電導コイル用コンジット材として、従来とは全く異なる材料である鋼中酸素含有量を適切(液体ヘリウム温度で高強度となる)に選んだ純Ti(薄板)に対して液体ヘリウム温度で荷重制御で疲労試験を行った。試験条件は引張り引張り負荷(片振り)(R=0.1)であり、波形は正弦波形を用いた。供試材には、あらかじめアルゴン中にて超電導材料生成熱処理熱処理(700℃で100時間保持)を施してある。また、表面粗さの疲労特性に与える目的で、受領状態のままとバフ研磨した試験片で比較した。 その結果は、超電導材料の生成熱処理温度がα相にあるので、β相(約900℃以上)での加熱保持の場合ほどではないが、結晶粒の粗大化が生じていた。また、熱伝導率の低いTiにおいては、試験中に温度上昇が起きると考えられたが、試験条件の10Hzの周波数では、温度上昇が約1K以下であり、特に疲労試験中において試験片全体での顕著な温度上昇は観察されなかった。 表面粗さの疲労挙動へ及ぼす影響は本研究では実質的には認められず、4Kでの純Tiの疲労限度と引張り強さとの比は、約0.5であった。すなわち、室温で得られている純Tiの0.6およびTi合金(Ti-6A1-4V)の0.55にくらべて若干低い値が得られた。 これは、疲労損傷過程でのすべりあるいは双晶変形によって生じる局部的に起きる不安定降伏現象(セレーション現象)が試験片表面でのき裂初生に寄与したためであると考えられた。
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