研究概要 |
Cu_3Au(L1_2)型規則合金について、その規則化プロセスと微細組織変化を記述するためにギンツブルグ・ランダウ展開による速度式の定式化を試みた。面心格子の配位数は4であり、L1_2に規則化すると2種類の副格子点(α,β)に区分される。それぞれの数は3と1であるので、どれがβサイトになるかにより4つの位相が発生する。そのために単一の実数の規則度では規則状態を記述できない。この困難を打開するにはいくつかの方法が考えられるが、本研究では基本的なPottsモデルを採用した。すなわち、4つの位相に対応する規則度S=S(η^1,η^2,η^3,η^4)を導入した。η^1,η^2,η^3,η^4は互いに縮退している。まず、均一な規則状態を想定してCu-Pt合金の状態図を再現するようにエネルギーパラメーターを決定した。組成と規則度の傾きによるエネルギー増加を考慮に入れることにより、一般的な変態過程に対応した速度式とした。これを数値的に解くことにより、微細組織の発展を解析した。計算により得られた主な結果を以下に示す。 (1)逆位相境界ではη^1がスムーズに減少し、η^2増加する事により位相が変化する様子が確かめられた。(2)逆位相境界近傍では規則度が0となる状態が発生し、そこでの組成は状態図での不規則領域の値になる。これは、逆位相境界に不規則相の出現(すなわち、wetting現象)に対応する。(3)今回の計算で求められた逆位相境界近傍の規則度の変化は、クラスター変分法で得られている結果とよく対応している。(4)周期的逆位相境界がヘヤピン機構によって消滅していく過程がうまく再現できた。(5)このほかにも、実験で観察された逆位相境界の挙動や相分解の様子を本速度式により再現することに成功した。 さらに、周期的逆位相境界の形成をも再現できるように速度式の改良を試みている。
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