研究概要 |
配位子の修飾により光増感剤としてキラルな環境場を制御したポリピリジンルテニウム錯体を用いて、アミノアルキルマロン酸あるいはその金属錯体を出発原料とするアミノ酸の新しい立体選択的光誘起反応を探索し、そのメカニズムを解明しつつ、高選択的な新しい反応系を構築することを目的として以下のような萌芽的な研究を行った。 立体構造を制御するためのキラルな直鎖状多座配位子としてN,N´-ジエチル-1(R),2(R)-1,2-シクロヘキサンジアミン(N,N´-Et_2-chxn)およびアラニン(ala)の前駆体であるアミノメチルマロン酸(AMM)を配位子として含む[Co(AMM)_2(N,N´-Et_2-chxn)]^-の合成とキャラクタリゼーションを行った。ついで[Co(AMM)_2(N,N´-Et_2-chxn)]^-の酸性水溶液中での脱炭酸反応によりR_-アラニンとS_-アラニンの比が83:17という高度な選択性で不斉合成されることを明らかにした。また高度な立体選択性の要因を解明するために、〔Co(R-ala)_2(N,N´-Et_2-chxn)〕CIO_4を別途合成し、その構造をX線結晶構造解析により明らかにした。さらに新規な立体選択的光誘起反応系の構築にとって重要なキラルな修飾ポリピリジン_-ルテニウム錯体の開発の目的で、アルキル置換基を導入した修飾ポリピリジン_-ルテニウム(II)錯体を合成した。それらの光学分割を行い、得られた光学活性体の発光特性、光ラセミ化に対する安定性等の基本的な性質を調べた。今後本研究で得られたキラルな修飾ポリピリジン_-ルテニウム錯体を光増感剤として、また上記で合成した基質であるアミノアルキルマロン酸ならびにそれらのコバルト錯体の光誘起脱炭酸反応について励起ルテニウム錯体から基質への電子移動やエネルギー移動過程、逆電子移動過程、および両者の会合過程等における立体選択性を詳細に調べ、選択性の発現機構を明らかにしていく予定である。
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