研究概要 |
構造物の中に,センサー機能とアクチュエータ機能を組み込んだスマートストラクチャーの考えを,複合材料と融合し,より高度なスマートストラクチャーが構築できるような基本要素を開発しようとする本研究で,以下の様な研究を実施してきた.(1)複合材料引張試験において初期破損,層間剥離などの材料特性の評価実験,解析を行った.(2)センサ機能として優れたインテリジェント材料の中でも,より大きな圧電性をもつ圧電フィルム(フッ化ビニリデン/トリクルオロエチレン;VDF/TrEF)をセンサー材料として選定し,ひずみゲージとの比較評価実験を行った.その結果,アルミ材一軸引張試験での分極処理工程による圧電異方性の存在の発見とその定量的評価,片持梁の振動試験での振幅,周波数-圧電特性の定量的評価などVDF/TrEFフィルムの圧電特性と周波数特性のデータを得た.(3)アクチュエータ材料としては,当初計画では圧電セラミックを使用する予定であったが,複合材料への組み込み特性の評価研究で,形状記憶合金(SAM)がより適当であると評価し,Ti-Ni合金を選定し,一軸引張負荷-除荷試験で,形状記憶効果の定量的評価,製作した恒温槽を利用し,変態点温度前後の形状記憶特性の把握など評価試験を行った.この研究の中で形状記憶合金が変態点前後で電気抵抗変化をおこすことを発見し,センサー機能として利用できることも確認した.又,(2)で評価したVDF/TrEFフィルムも振動-圧電特性が優れていることから,購入した圧電素子制御装置(KDG-1028型)を用いて,複合材料梁に接着したVDF/TrEFに最大にAC1kVの高電圧をかけ,複合材料梁の制振特性に関する評価試験を行い制振梁に関するデータを得た.これらの成果を元に現在,複合材料とVDF/TrEF, SAMとを融合化する技術の習得,種々の制御則の開発などを行っている段階であり、完全な基本要素の開発までには至らなかった.
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