研究概要 |
著者らは,ムラサキイガイ(Mytilus edulis galloprovincialis)を用いた付着誘引物質および忌避物質を探索するユニークな試験法を確立した.足糸形成に対する,形,撹拌,空気の存在,塩濃度,カルシウム,マグネシウム濃度,温度など各種物理的,化学的要素について研究されている.今回,足糸形成に影響する各種化合物について調べた.その結果,Fe (III) EDTA,コウジ酸,L-アスコルビン酸,安息香酸ナトリウムおよびフェノールは,100μmol/lで,足糸数がコントロール(8±1本を100%とする)より,49, 44, 19, 16および4%増加した.Fe (III) EDTAは,200μmol/lで2倍になったが,コウジ酸は50〜200μmol/lでそれ以上増加しなかった.MgCl_2およびCaCl_2は6および24%の足糸数の減少を示し,硫酸銅とニコチン酸アミドは10および5umol/lで完全に足糸の形成を阻害した.従来のムラサキイガイの固定する試験法にかえて,貝を自由にさせた新試験法を考案した.塩ビの筒の底をふさぎ,細かい砂を入れ,貝1個体を置いた.筒の内側にウェブロン紙を巻き,それを4等分し,交互に試験する物質を塗った.3日間海水に漬け,貝がどこに移動するかで判定するものである.この試験で,クルクミン,インディゴカ-ミン,α-トコフェロールおよび鉄粉が1.0μmol/cm^2で誘引活性を示した.ノニルフェノールは,0.1μmol/cm^2で忌避活性を示した.試料の必要量は,固定化法とほぼ同じで,結果も一致し,従来の試験法の有効性も確認できた.
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