研究概要 |
我が国では肉用牛群の省力な放牧管理が求められている。このためには個体識別(ID)しながら自動的に体重計測する技術を開発することが重要であり,今回,IDつき自動体重計測定装置の技術開発とこの実用性について検討した。この結果は以下のとおりである。 1.放牧地で水と濃厚飼料を誘因としたセンター施設に牛群を誘導するようにし,その途中に追込み柵,ベニヤ板張りの誘導柵,自動閉鎖する出入り口,自動ゲートと連動したIDつき自動体重装置を設置した。これらの施設はアングル鋼や鉄パイプ,コンクリートパネルなどで低コストに仕上がった。牛群には放牧地からこのセンター施設までの一巡を5〜6回強制的に追い回して馴致させた。 2.このシステムは,試験期間中の育成繁殖牛の個体・群としての増体量の管理に適用できた。実用規模頭数による個体識別は98%以上,体重計測は90%以上を割合であったので,このシステムの実用性は肉牛管理にとっては予想以上の成果と思われる。ただ,強制追い込みによるセンターへの入口部における計測であるので,牛群の社会的な順位が攪乱される傾向が認められるので,今後は,放牧地から自然にセンターに入ってくる時の入口部での計測方法に改善する必要がある。 3.発情牛の徴候として,12〜6kgの体重減と体重計上の通過順位が29〜39位下がる傾向があった。また,測定日の体重とその前3日間の平均体重との比を体重変化率とすれば,その体重変化率は,全体では0.0%を中心に分布するのに対し,発情牛群は-2.4〜0.0%を中心に分布した。今後,発情牛の判読は体重や通過順位の変動の傾向が瞬時に発見できるシステム開発が必要である。
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