| 研究概要 |
ステロイドホルモンがその作用を発現するためには,標的組織のレセプターと特異的に結合しなければならない.しかしミネラロコルチコイドであるアルドステロン・レセプターはグルココルチコイドとも強く結合する.血中のグルココルチコイド濃度はアルドステロンよりも高いので,アルドステロン・レセプターはグルココルチコイドに占められてしまい,本来のリガンドであるアルドステロンとは結合できなくなってしまう.ところがミネラロコルチコイドの標的組織にはステロイド11β-水酸基脱水素酵素(11β-HSD)という酵素が備わっている.この酵素はグルココルチコイドの11β位水酸基をケトン基に変換し,それによってグルココルチコイドはアルドステロン・レセプターに結合できなくなる.
ウズラの卵管は,卵黄膜外層,水様性卵白,濃厚卵白,卵殻膜,卵殻を分泌する外分泌腺であり,アルドステロンによって無機質の濃度が調節されている組織である.そこで本研究では産卵中のウズラ卵管の各部位からミクロソーム分画を調製し,NADPの存在下で[^3H]コルチコステロンとインキュベーションすることによって,11β-HSD活性の部位による違いを測定した.11β-HSD活性を発生各段階のウズラ腎臓に含まれている活性,および妊娠中と泌乳中のさまざまな時期のマウス乳腺の活性と比較した.その結果,ウズラ卵管には腎臓と同じように11β-HSDの活性が認められ,特に卵管膨大部および卵殻腺部に強い活性があることがわかった.またマウス乳腺でも本酵素の活性が検出でき,これらの組織がアルドステロンの標的となっており,アルドステロンによって塩濃度の調節を受けていることがいる可能性が示唆された.
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