研究概要 |
1.ヒト カルシトニンレセプター(CTR)遺伝子のポリモルフィズムについて 昨年度発見したCTRcDNAの1377番目のポリモルフィズムの分布を日本人由来の腫瘍細胞8株と白人由来の腫瘍細胞9株を用いて調べた。その結果、日本人ではCのタイプが、白人ではTのタイプが多く、両者の間には有意な差が見られた。この結果より、CTR遺伝子のポリモルフィズムの分布は人種により異なることが明らかとなった。 2.日本人におけるCTR遺伝子のポリモルフィズムと乳癌との関係についての解析 乳癌の発生にはいろいろなファクターやいくつかの遺伝子が関与していると言われているが,これまで乳腺におけるカルシトニン(CT)またはその受容体の機能についての報告はない.しかしながら,乳癌由来の培養細胞株であるT47DとMCF7でカルシトニンレセプター(CTR)が多量に産生され,実際CTRcDNAのクローニングがT47Dを用いて行われている.さらに、妊娠中や授乳中に血中CTの上昇が見られミルク中のCTも非常に高いことが報告されている。これらのことから,我々は,CTとCTRは乳腺の増殖や分化の調節に関与しているのではないかと考えている.また,近年レセプターのポリモルフィズムと疾患との関係が明らかにされてきている(乳癌とエストロゲンレセプターやビタミンDレセプターと骨粗しょう症など).我々は以前にCTR遺伝子の1377番目にポリモルフィズムが存在していることを報告している.そこで,CTR遺伝子のポリモルフィズムと乳癌との関連について乳癌組織46サンプルと正常組織50サンプル(コントロール)のDNAを用いて調べた.その結果,コントロールと乳癌組織および乳癌患者の血球のCTRgenotypeの間で有意な差を認めなかった.さらに,乳癌の組織型について調べた.その結果,PapilotubularとSolid-tubularおよびScirrhous carcinomaのCTR genotypeの間で有意な差を認めなかった.以上の結果より,日本人においてCTRのポリモルフィズムは乳癌発生のための遺伝的リスクとはならないことが明らかとなった.
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