研究概要 |
4F2抗原は,活性化されたリンパ球や癌等の増殖の盛んな細胞の膜上に発現される,heavy及びlight chainからなるヘテロダイマー蛋白であるが,light chainの構造が明らかになっていない.アミノ酸分析の結果,そのlight chainとhnRNP A2/B1蛋白(heterogeneous nuclear ribonucleoprotein A2/B1)がホモロジーを示すことが分かった.そこで,4F2抗原,特にlight chianの構造と機能,そしてその病的な意義を解明すべく研究を行った. まず,4F2抗原のlight chainを同定する為に,hnRNP A2/B1のcDNAに標識配列を付加した組換えDNAを作成し培養細胞にtrasfectした.その結果,hnRNP B1蛋白のみがlight chainとして組み込まれることが明らかになった.さらに,hnRNP B1蛋白特異的なモノクローナル抗体を作成し解析を進めた結果,4F2抗原light chainはhnRNP B1蛋白そのものではなく,転写後修飾されたhnRNP B1蛋白,或いは新たなisoformであることが推測された.さらにhnRNP B1蛋白は多段階的なりん酸化等の転写後修飾を受けること,基本的に核内に存在するが細胞によっては細胞膜上にも発現され,還元剤でheavy chainとの結合が切れ解離すること,また,その発現は細胞特異的に調節され,皮膚及び精巣にはsplicing isoformが存在することが示唆された。 SLE等の自己免疫疾患でhnRNP A2/B1蛋白に対する抗体価の上昇が報告されていることから,モデルマウスを用いてその病的な意義についても検討した.抗hnRNP B1抗体は,MRL-lpr/lprには関与していないが,Newzealand-B/Wマウスでは,腎病変発生に関与している可能性が示唆され,現在その解析を進めている。
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