胸腺内T細胞分化に関与する胸腺上皮細胞表面蛋白質、HS9を過剰発現するトランスジェニックマウス3系統を作出した。HS9は生理的には胸腺外側皮質に発現する。これに対して、いずれの系統のトランスジェニックマウスでもHS9は胸腺上皮全般に発現していた。トランスジェニックマウスには外見上の奇形および病変は認められなかったが、胸腺細胞数は1.2-1.8倍に増加していた。主にCD4CD8陽性でTCR陽性の分画が増加していた。この結果はHS9がCD4-CD8-(DN)からCD4+CD8+(DP)への胸腺T細胞分化を促すという従来の知見を裏付けるものである。さらに、これらトランスジェニックマウスはsplenomegalyを呈しており末梢の免疫異常を伴うことが示唆される。ConAによるT細胞刺激による反応性が低下していることが明らかになった。 また、本年度はノックアウトマウスの為にベクターを構成した。129マウス用にHS9をコードするgenomicDNAを単離してエクソン1-3の置換型タイプのベクターを開発した。
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