研究概要 |
昨年度の研究で少数例ながらCrohn病(CD)の病変部特異的なT細胞クローンが存在することが示されたので,今年度は例数をふやしてこれを確認した。その結果,次の結果が得られた。解析対象となったのは計10例のCD患者で,うち8例は検査時点で免疫抑制剤を投与されておらず,1例(症例9)ではprednisolone,1例(症例10)ではazathiopirinを投与されていた。各症例のTCR VpについてのSSCPの結果,症例1ではV_β5.2,7,8,9,10,15,19に7つ,症例2ではV_β5.1,12に2つ,症例3ではV_β1に1つ,症例4ではV_β1,4,11,13.2に4つ,症例5ではV_β6,7に2つ,症例6ではV_β1,3,14に3つのクローンがアフタ様病変特異的に検出された。これらクローンのV_βとHLAの間には明らかな相関はみられなかった。症例7〜10ではこのようなクローンは検出されなかった。検査後のCDの経過は,症例1〜6では憎悪して薬物療法や手術を要したが,症例7〜10の,そのようなクローンのなかった症例では悪化しなかった。同一患者で2つのアフタを調べた4例では,いずれでも同じクローンが各々のアフタに認められ,このことはシークエンスでも確認された。CDR3領域のアミノ酸配列には共通のモチーフは確認できなかった。以上より,病変,特にアフタ様病変という初期病変に特異的なT細胞クローンが確認されたことになり,これらの中に抗原特異的に応答しているものがあることを示唆していると考えられた。
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