研究概要 |
精神分裂病患者を対象に,赤血球膜リン脂質クラス組成,分子種組成をそれぞれ分析し,正常対照群との比較検討,経過による縦断的検討,病態との関連を検索している。現在のところ,未服薬群で以下のような傾向をみいだしており,既に公表している。 1,赤血球膜リン脂質クラス組成で,ホスファチジルコリン(PC),スフィンゴミエリン(SM)比の低下がみられる。 2,ジアシル型PCの分子種組成で,不飽和脂肪酸を含む分子種の低下,不飽和脂肪酸を含まない分子種の増加がみられる。 3,PC/SM比と不飽和脂肪酸を含む分子種組成比との間に正の相関傾向を,不飽和脂肪酸を含まない分子種組成比との間に負の相関傾向がみられる。 以上のような変化は,赤血球膜の動的構造において,膜の流動性の低下などをきたすと考えられ,微小循環に影響している可能性だけでなく,神経細胞でも同様の変化がおこっているならば,神経伝達にも何らかの影響をおよぼしている可能性がある。この傾向は服薬群でもみられることを確認しており,服薬,経過との関連を現在検討している。臨床亜型,症状との関連も検討しているが,現在のところはっきりした傾向はみいだされておらず,症例の蓄積が必要と考えている。
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