研究概要 |
本研究では,電気伝導度検出器にアミノ酸の分離とともにNa_+とNH_<4+>の分離を改良した1価・2価陽イオン測定カラムをさらに改良したIC-C3カラムを装着したイオンクロマトグラフィー・システムの応用により,初めて血清のほかにも,胆汁,膵液,尿などの体液中電解質としてCa^<2+>とMg^<2+>,微量元素としてFe^<2+>,Zn^<2+>,Mn^<2+>,Ni^+,Co^<2+>の各イオンを同時に定量できるようにし,しかも,本システムではNH_<4+>の定量も可能であることから,これらを含めてヒト体液中の電解質および微量元素のイオン濃度を実測することで,その体内分布を明らかし,さらに,各種の消化器疾患における各イオン濃度について臨床的検討を行った。特に肝機能との関連において,その機能低下例における血清イオン濃度の特徴を明らかにすること,および,胆石症における胆汁中イオン濃度を測定することで胆石症の成因に関与する因子を明らかにすることについて検討した。その結果,消化器疾患別には,肝内結石症の血清中Mg^<2+>が有意に高いことが判明した(p<0.05)。肝機能低下例では,健常例に比べて血清中総Zn濃度が低いのに反して,血清中Zn^<2+>はむしろ高く,したがって,亜鉛のイオン化率が有意に上昇していた(p<0.05)。この血清中Zn^<2+>は血中アルブミン値とr=0.62,プレアルブミンとr=0.73の負の相関を示した。ビリルビンカルシウム石症例では,胆汁中Ca^<2+>が有意に高く,Mg^<2+>もやや高値であった。胆汁脂質との関係では,Ca^<2+>とMg^<2+>は総胆汁酸と正の相関を示すことが判明した。特にMg^<2+>はchenodeoxycholic acidと正の相関を示し,Mg^<2+>の胆汁中への排泄に胆汁酸の関与が示唆された。 以上により体液中イオンの一括測定法を考案し,肝機能評価に応用でき,新しい診断法の1つとして有用である。
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