研究概要 |
腫瘍マーカーは、腫瘍の存在、進展、治療効果の判定に必要であるが、現時点において実際に臨床に有用なものは、いまだにその数は少ない。またその開発は通常モノクローナル抗体を作成をはじめとして多大な労力と時間を必要とするが、実用に耐えうるものを得る可能性は少なく、従来とは異なる方法による腫瘍マーカーの開発も期待される。 そこで、新しい腫瘍マーカーの開発を目的とし、担癌患者において、腫瘍に対する抗体の形成を想定し、エピトープライブラリーを用いて、担癌患者血清中抗体のエピトープをクローン化し、そのクローンをそのまま腫瘍マーカーとして使用するという手法を用いて行った。9個のアミノ酸のすべての組み合わせをコードする合成オリゴヌクレオチド((NNN)6-9、(N=A,C,G,T))を繊維状ファージ発現ベクターに挿入し作成したエピトープライブラリーを用いて、大腸癌症例106例(原発巣98例、肝転移巣8例、原発巣、肝転移巣を異時性に切除したもの4例)においてその術前血清を採取し、スクリーニングした。 その結果、担癌患者血清中の免疫グロブリンガ健常者に比し特異的に結合するクローンを選択し、得られたクローンの一部を、そのまま抗原として用い、大腸癌、他の悪性、良性疾患、正常人、の血清を使用した結果を比較し、腫瘍マーカーとして使用できる可能性をROC法を用いて検定している。 また、得られたクローンをプロープとして、大腸癌cDNAライブラリーをスクリーニングしエピトープを含むタンパクをコードする遺伝子のクローニングを試みている。
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