研究概要 |
生後約6〜8週,体重150〜250gのS‐D系ラットの坐骨神経を切断し,その末梢部神経約20mmを切除した。神経末梢側中枢端に約10mmの自家大腿動脈を盲管として縫着し,その内部に胎生14日目の胎児脊髄を注入した。術後約3か月で移植部末梢を電気刺激すると、全例において前脛骨筋と腓腹筋の誘発筋電図が確認できた。また、脊髄移植ラットに対して術側の前脛骨筋と腓腹筋にCTB0.5mgを蒸留水100μlに溶解したものをmicrosyringeでそれぞれ50μlずつ注入した。約48時間後,経心臓的に0.01M phosphate bufferにて潅流後1.0%paraformaldehyde,1.25%glutaraldehydeを含む0.1M phosphate bufferにて固定した。移植部を摘出後,凍結しcryostatで13μmの薄切切片を作成し,B励起にて落射式蛍光顕微鏡で観察した。蛍光標識にてcryostatで13μmの薄切切片を作成し,B励起にて落射式蛍光顕微鏡で観察した。この神経細胞は楕円体型および多角体型を呈していた。一方CTB非注入ラットには同様の蛍光を一切認めなかった。CTB注入群,CTB非注入群,各群内で個々の所見は同等であった。in vitroにてfetal spinal neuronとmuscle fiberの再結合による新たなneuromuscular junction形成の報告はあるが,これまでin vivoにて移植された脊髄神経細胞が機能的再建に貢献したという報告はない。筋に投与された蛍光標識物質が軸索流によって逆行性に移植部細胞に取り込まれたことより,筋と移植部神経細胞間に直接の線維連絡が証明された。この神経細胞は,移植した胎児脊髄にはdorsal root gangliaおよびsympathetic gangliaを含まないことと,muscleとneuromuscular junctionを形成したことよりanterior horn motoneuronまたはpreganglionic sympathetic neuron[1]であることが考えられる。今後の展望としてはいかにこの運動単位をcontrolするかであるが,電気的刺激や化学的刺激により興奮させることが考えられる。以上より末梢神経レベルで静脈を用いた盲管を作成することにより神経断端に位置する脊髄神経細胞から再生した軸索が脱神経筋を再支配したと考えられる。すなわちこの手法により運動単位再建が成功したといえる。
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