研究概要 |
生体用金属材料として注目されているチタンは,歯科の分野においても研究が盛んに行われており,すでに実用化されているものもある。合金化されていないチタンは,一般的に変形しやすく歯科用としては十分な陸学的性質を持っているとは言い難い。そこで,チタンを合金化することにより,チタンの臨床応用の範囲を広げようと試みた。まず,チタンとジルコニウムに注目し,チタンとジルコニウムの原子比が1:1となる組成を基本組成とし,それにニオブを添加した合金を作製し,力学的性質,熱処理の影響について検討した。その結果,ニオブの添加量が4%までと8%以降の合金では,異なる組織がみられ,その間の組成になんらかの境界が存在することがわかり,強化できることはわかった。 さらに,すでに実用化されているTi-6Al-4V合金とバナジウムをニオブで置き換えたTi-6Al-7Nb合金についても検討した。歯科の分野で実用化するためには,精密歯科鋳造ができることが必要であるが,Ti-6Al-7Nb合金はチタンの鋳造と同じ方法で鋳造することによって,良好な鋳造体ができることがわかった。力学的性質においては,Ti-6Al-7Nb合金はTi-6Al-4V合金より引長強さは小さくなるが破断伸びは大きくなった。Ti6Al-7Nb合金の耐食性に関しては,チタンの溶出量はチタンと同程度でTi-6Al-4V合金より少なく,ニオブの溶出量はTi-6Al-4V合金からのバナジウム溶出量より極めて少ないことがわかった。
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