研究概要 |
異常アミノ酸、特にα,α-ジ置換光学活性アミノ酸は酵素阻害剤やペプチドの配座制御因子として、また生理活性天然物の構造単位として近年その重要性を増しつつある。これらの合成は通常、不斉補助基を用いる不斉合成法か光学分割法により行われているが、このような方法では目的物を得るのに多段階を要することが原理的に不可避である。本研究では従来の不斉合成法のいずれの範疇にも入らない新しい方法によるα,α-ジ置換光学活性アミノ酸の合成法を検討した。即ち光学活性なα-アミノ酸誘導体から生体するエノレートを新電子剤でトラップするという一段階の操作による不斉誘導を検討した。 報告者は窒素の置換基としてメチル基とBoc基とを持つフェニルアラニン誘導体のα-メチル化反応に関してこのような不斉誘導(^〜88%ee)を既に見いだしているが、今回同様の不斉誘導がチロシン、トリプトファン誘導体でも見られること(67^〜82%ee)、これに対しアラニン、バリン、フェニルグリシン誘導体では見られないこと(^〜10%ee)がわかった。このように一部のアミノ酸については外部不斉源を用いることなくアミノ酸のα位不斉炭素を唯一の不斉源とする一段階不斉誘導法の開発に成功した。しかしこの方法では窒素の置換基として除去が困難なN-メチル基を用いることが必須であった。そこで除去が容易な窒素置換基を持つアミノ酸誘導の一段階不斉誘導法の検討を行い、MEM基とBoc基とを窒素置換基とするフェニルアラニン誘導体のα-アルキル化が70%ee以上の不斉収率で進行することを見い出した。
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