研究概要 |
上記研究課題について当初の研究計画をほぼ完了したので報告する. 1.ジストリプシンの精製と性状解析:ヒトデュシャンヌ型筋ジストロフィーと同一の遺伝子に欠陥を持つ筋ジストロフィーマウス(mdxマウス)の後肢骨格筋において、発症の直前で筋ミクロソーム画分のBoc-Val-Pro-Arg-MCA水解酵素(ジストリプシンと命名)の活性が一時的に上昇することをすでに見出しているが、この酵素の完全精製に成功した.酵素的性質はトロンビンと類似していたが、抗トロンビン抗体との反応性や分子量が,トロンビンとは異なることが明らかになった.また,精製ジストリプシンのN末端配列を解析したところ,セリンプロテアーゼとの相同性は見られたが,マウストロンビンとは異なる配列であることがわかった. 2.ジストリプシン阻害剤の発症抑制効果の解析:ジストリプシンに対する阻害剤を各種検討した結果,メシル酸誘導体がジストリプシン活性を強く阻害することがわかったので,3種類のメシル酸誘導体を用いて筋ジストロフィーの発症抑制効果について解析した.その結果,少なくとも,メシル酸カモスタットは,血清中のCPK活性を指標にした生化学的検査においても,また,罹患筋の組織学的解析においても,明らかに本疾患の発症を抑制する活性があることが示された.筋ジストロフィーに対する治療薬がない現在,ジストリプシン阻害剤は筋ジストロフィーの治療薬になりうることが示唆された.
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