転写因子SREBPは、小胞体、核膜上に膜タンパク質として局在し、未だ同定されていないプロセッシング酵素によりN末端側が切り放され、それが核へと移行し、転写因子として働く。このプロセッシングは、細胞内のコレステロール量が増えると低下し、一方減少すると亢進し、コレステロールによる転写フィードバックコントロールを担っている。N末端側が切り出され、膜上に残った膜貫通領域とC末端側の去就とC末端側の機能を明らかにする目的で、発現ベクターに膜貫通領域とC末端側をコードするcDNAを組み込み、恒常的にこれを過剰発現するCHO細胞株を獲得した。C末端側を認識するポリクローナル抗体は、大腸菌にC末端側を含む融合タンパク質を過剰発現させ、これを精製し、抗原としてウサギを免疫し、抗血清を得た。この細胞を[^<35>S]Metでラベルし、pulsc-chasc実験を行い、目的のタンパク質をポリクローナル抗体を用いて免疫沈降させ、解析した。膜貫通領域とC末端側は数時間の半減期で比較的早い速度で代謝回転され、転写活性を持たない部位は速やかに除去されることが明らかになった。また、過剰発現したC末端側のプロセッシング酵素による内因性SREBPプロセッシングに及ぼす影響を検討した。即ち、本細胞株をコレステロールを枯渇させた条件、コレステロールを過剰に負荷した条件で培養し、LDL受容体、HMG CoA合成酵素のmRNAの変動を観察した。いずれのメッセージもコレステロールの増減に応じて親株と同様の応答を示し、過剰発現したC末端側はプロセッシング反応に影響を及ぼさないことが明らかになった。
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