研究概要 |
アルミニウムイオンは細胞膜を通過し,一部が脳に蓄積され,アルツハイマー性痴呆症の原因の一つになると言われている.そこで平成7年度は,食品や食品包装材料などから溶出したアルミニウムを経口摂取した場合の体内吸収の可能性を,アルミニウムイオン(Al^<3+>)と他の食品成分との結合能から調べた.また,平成8年度は,緑茶,紅茶,ウ-ロン茶浸出液およびインスタントコーヒーに含まれるアルミニウムを,イオン化率の点から検討した. その結果,(1) 大豆抽出の水溶性食物繊維は無水物1gあたり21mg,熱水抽出ペクチン質は5mgのアルミニウムイオンを結合した.市販のコーンファイバーには水溶性,不溶性とも結合能はなかった.大豆抽出の水溶性ヘミセルロースは0.4mg,キシランが0.5mgのアルミニウムを結合した.ポリフェノールはエピガロカテキンガレートが1gあたり1.6mg,タンニン酸が1.1mg,クロロゲン酸が0.7mgのアルミニウムを結合した.また、クエン酸は約44mg,シュウ酸が30mgであった.(2) 緑茶,紅茶浸出液,インスタントコーヒー溶液のアルミニウムはイオン化せず,ウ-ロン茶のみが10〜20%イオン化した.pH1.8に調整し37℃で1または3時間振盪するとウ-ロン茶のイオン化率は約5〜10%上昇し,インスタントコーヒー溶液のアルミニウムは約半分がイオン化した.それに対して緑茶と紅茶のアルミニウムはpH調整後振盪してもイオン化しなかった. 以上のこと経口摂取されたアルミニウムの一部は食物繊維やポリフェノール類と結合しやすく,なかでもカテキンの豊富な緑茶や紅茶浸出液のアルミニウムは体外に排出される可能性が高いことが示唆された.
|