研究概要 |
泡沫の応用系では,泡膜の移動にともなって基質表面をPlateau境界が滑るように移動するため,浸せき系におけるかくはんと同様の効果が発生しているものと考えられる.本年度の研究では,Polystyrene微小粒子をdetectorとして用いPlateau境界内の乱流あるいはその周辺の液流を観察することを試み,さらにこのdetectorの運動から2次元的にではあるが液流の速度を試算した. 観察に用いる主装置は,顕微鏡ビデオ装置であるが,今回の補助により,これを透過照明観察,明・暗視野落射照明装置,微分干渉観察等が行える高機能な顕微鏡装置とした.種々の観察を試みた結果,観察条件としては暗視野落射照明観察が適していることが明らかとなり,従来使用してきた観察装置の起泡,消泡部とあわせ,より鮮明な観察画像を得ることができた. 液流の速度についてはPlateau境界内の液流が,Plateau境界そのものの移動速度より大きいという結果が得られた.また,この速度ベクトルをPlateau境界に直行する方向とPlateau境界に沿った方向とに分割して解析した場合,後者の方がより大きな値を示した.これらの結果はPlateau境界の乱流等の液流の存在を裏付けるとともに,たとえばらせん状の液流といった3次元的な液流の存在を示唆するものと考えられる.すなわちPlateau境界は泡沫内部で一種のnetworkを形成するが,このnetwork内での液流の発生が予想される. 今後はPlateau境界周辺の液流のみならず,ややmacroな視点から泡沫系における液流をとらえ,またPlateau境界の移動速度や泡沫を形成する液体成分の粘性などの物性がこれらの液流に与える影響を調査する.
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