研究概要 |
本研究の目的は,画像処理による近世絵図の図形分析法を確立することである。具体的な研究は,正保期と元禄期の出羽国絵図における図形の相違を画像処理によって分析し,この相違が生じた理由を考察した。 1.絵図研究に画像処理を導入する必要性を,従来の絵図研究の研究史を整理しつつ,論文にまとめた(「景観論と絵図研究」)。 2.画像処理を行う絵図資料として,まず出羽国絵図の所在確認と資料吟味を行った。本研究の所在調査によって,出羽国絵図133点を確認,ほぼ完全に近い現在リストの作成が完了した。また現地で絵図を1点ずつ詳細に研究し,これらの作成年代を推定した一覧表を作成した。これにより,各藩での国絵図の作成過程がおおむね明らかになった。また本研究に欠くことのできない国絵図を撮影することができた。いずれも6×7mほどの大型絵図のため,分割撮影し合成する方法をとった。これに加え,すでに入手した絵図の写真版によって分析を試みた。 3.正保期と元禄期の出羽国絵図5点について,重ね合わせの画像処理を行った。この結果,図形の相違箇所を明瞭に確認することができた。次に,図形の変形により歪みの分析を行い,歪みの箇所とその度合いを示し,その理由を文書資料などによって考察した。秋田藩については検討中であるが,米沢藩では元禄期に新たに国絵図を作成し直したにもかかわらず,幕府の内見によって国境・郡境が修正され,結果として全体の図形は正保期の国絵図を踏襲したことが明らかとなった。
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