研究概要 |
コンピュータの出現と進歩によって数学研究において実験的な研究が広く行われるようになってきている.また,学校数学でも,実験・観察をし,自ら図形の性質や定理を見つけることができる環境が提供され(Schumann & Villiers,1993),実験・観察的な方法が可能になった. 中学以降数学嫌いが増える原因の一つに図形の形式的な証明があげられている.そこで,本研究では,現在行われている形式的な証明へ至る前に,コンピュータを利用しながら,実験・観察を通して,自分で見つけた図形の性質や定理がなぜいえるのかの理由を友達と「議論しながら説明する」という活動を証明学習に取り入れ,形式的でない証明活動を検討した. 生徒の活動を分析するために,短大生を対象に2人で議論しながら「図形の性質を見つけ,それが成り立つわけを説明する」という実験と中学2年生を対象に「図形の性質を見つけ,見つけたことを使って証明を書く」という2つの実験を行った.その結果,厳密な証明は行われないが,前提と結論で推論を進めていく様子がうかがわれ,自分で見つけるという探究活動が,論理的に説明したり,論理的な証明を作ることを支援する場面が見られた.自分で見つけたことを,その理由を説明したり,形式的に書くことにおいて,生徒は,能動的に活動し,関心・意欲の面でも改善され,証明学習にも効果があると思われる.また,中学校の図形学習で実験・観察を行い探究活動から証明活動が実現することで,小学校から中学1年まで行われている図形の観察,実験を通して図形の性質や関係を学ぶ「直観幾何」と中学2年から始まる「論証幾何」のギヤツプ(橋本他,1995,1996)を埋めることにもつながるだろうことも期待される.
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