研究概要 |
情報を形成する諸要素の内,聴覚障害者は音・音声による聴覚情報の受容に障害を有している。情報処理過程において,聴覚情報が欠如した場合の受容情報構築にどのような影響を生じるか,また,視覚情報優位の情報処理過程の特性について,次のような生活場面での観察データを通して考察した。 1)テレビ等の映像・音声情報の受容 2)解説などの音声情報の受容 3)機器操作上の機器音と操作行動との関係 <概要> 1)テレビ等の映像・音声情報の受容 ・テレビニュース映像の読み取り内容から見た情報処理過程の特性 同日のテレビニュース3社制作のものを比較視聴し,読み取れた内容と実際の伝達内容とを比較してその差異を比較検討する。 =ニュースの基本要素(ナレーション,映像,字幕)の内ナレーションを除いた情報の受容は情報全体の構造を大きく逸脱はしないが,事の関係に関する情報が欠落する傾向を有する。 2)解説などの音声情報の受容 テーマパークにおける音声ガイドのセリフと風景との関係から把握できる情報内容の分析と「手話」(視覚言語情報)による情報に置き換えたときの情報内容との差異を比較検討する。 =音声言語体系を基本にした手話への翻訳は必ずしも同じ情報内容を伝達しきれない。手話独自の表現方法による言い替えにより可能となる。 3)機器操作上の機器音と操作行動との関係 ファクシミリの操作過程で発生する音情報と操作の関係を,行動観察を中心としたプロトコルデータを分析し明らかにした。 =機器の正常動作の確認を用紙の動きや機器の振動で確認するなど特有の情報受容状況が観察された一方で,通信エラー発生時の対処は受話器音や音声ガイドの受容が困難なため困難であった。これらに代わる光・文字表示の重要性が明らかになった。
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