研究概要 |
優れた機能性を有する、新しいタイプのアンチセンスDNAとしての修飾オリゴヌクレオチドを創生する事を目的として、我々は、新規にデザインした、2´-deoxyadenosine(dA)の5´位のメチレン基を取り除きその安定性を確保するために炭素環に置換した、光学活性なD型の炭素環5´-Nor 2´-deoxyadenosine 誘導体及び炭素環5´-NOR-3´-deoxyadenosine誘導体を合成し、それらをリン酸ジエステルで結合した、これまでに全くないタイプの修飾オリゴヌクレオチドを合成した。即ち、天然型DNAに比べて、おのおののnucleoside間が一メチレン鎖短いリン酸間結合を有するオリゴヌクレオチド誘導体を合成し、その機能性について検討した。その結果、各メチレン基を欠くためDNAやRNAとの相補的な結合が困難であると考えられていたが、驚くべきことに、DNAとは比較的不安定なComplexを形成するのに対し、RNAとは特異的に安定なComplexを形成する事が判明した。 また、これらのオリゴヌクレオチドのリン酸ジエステル結合は、そのメチレン基を欠くために生体内に存在する核酸分解酵素の基質になり得ず、安定であると考えられる。そこで今回各種ホスフォジエステラーゼ(蛇毒、主に3´-exonuclease)、(仔ウシ脾臓、5´-exonuclease)、及びヌクレアーゼS1(主にendonuclease)を用いてこれらの安定性を検討した結果、天然型DNA(dA_<24>)と比較して非常に安定である事が判明した。これらの事実は、これらがターゲットであるウイルスのRNAに選択的に作用でき、また、生体内で安定な抗ウイルス作用を有するアンチセンスDNAとして、理想的な性質を持っていると考えられる。 そこで今回は、HIV-1の遺伝子産物であるTatをコードする配列(Sense)に相補的な塩基配列を有し、そのdAを炭素環5´-Nor 2´-deoxyadenosineに置換した修飾オリゴヌクレオチド(Antisense DNA,24 mer)及び(Sense DNA)を合成した。これらの機能性を検討するために、UVスペクトルによるMelting curveを測定しTm値を算出した結果、天然型DNAと比較して同様なComplexを形成する事が明らかとなった。現在これらのオリゴヌクレオチドの抗エイズ活性について検討している。 炭素環アンチセンスDNAを完成させるためには、残りの核酸塩基であるguanosine,thymidine,cytidineに関して、それらの光学活性なD型の炭素環5´-NOR-2´-deoxy及び3´-deoxy nucleoside誘導体の合成は不可欠である。そこで今回は、これらのthymidineオリゴヌクレオチド誘導体の合成を目的として、光学活性な(+)-(1R,4S)-4-hydroxy-2-cyclopenten-1-yl acetate [α]_D^<27>+68.60^。(c1.56,CHCl_3)を出発原料に用いて(1R,4S)-N^3-benzoyl-1-(4-hydroxy-2-cyclopenten-1-yl)-1H-thymineを合成し、ハイドロボレーションにより、これらの単体である炭素環5´-NOR-thymidine誘導体及び炭素環5´-NOR-2´-hydroxy-3´-deoxythymidine誘導体を合成した。現在これらのオリゴヌクレオチド誘導体を合成しそれらの機能性について検討している。
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