研究概要 |
[目的]本研究は単一分子検出法の一つである蛍光相関分光法(Fluorescenc Correlation Spectroscopy,FCS)を用いて,溶液中での3重鎖DNAの形成機序の解明を目的とした。このために3重鎖DNAの一つのモデルとして蛍光標識(ロ-ダミン)オリゴT15DNAをプローブとし,ホモプリン:ホモピリジン鎖で形成された2重鎖DNAをターゲットとして,プローブDNAの並進拡散速度の変化から3重鎖生成過程をとらえ、それを用いて3重鎖DNA作用機序の解明を行なおうとしたものである。初年度はFCS法を3重鎖DNAの生成過程の定量化法として確立した。次年度は実際の3重鎖形成過程をFCSを用いて測定を行い,その過程を解析した。 [方法]まず,光標識モノマー(Flu-dUTP)存在下でPCR法を用いる事により,DNA鎖長をコントロールしながら,蛍光標識を導入す方法を開発した。これにより,50塩基対から7000塩基対までの様々の長さのDNAの並進拡散速度を調べる事が可能となった。また,3重鎖DNAの生成過程と比較するために蛍光標識一本鎖DNAが相補的なDNA鎖に結合し2重鎖DNAを生成する過程を解析した。 [結論]FCSで求められた2重鎖DNAの並進拡散速度はDNAを剛体棒状分子として数値計算した結果と非常に良い一致を示した。3重鎖DNAはさらに強固な構造を取ることが考えられるため,FCSを用いて3重鎖DNAの形成過程を解析できる事を明かにした。 3重鎖DNAの生成速度は2重鎖DNAに比較して遅い事,また,2重鎖DNAでは加えたプローブDNAの全量が結合したのに対し,3重鎖DNAでは8割しか結合していないことが分かった。今後,塩基配列を変えたプローブDNAやターゲットDNAを用いてミスマッチの影響を調べて行く予定である。
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