研究概要 |
神経の発生・再生過程で神経成長円錐は標的細胞に向かって伸長し、標的細胞に到着し、そこで高度な神経伝達機能を備えたシナプスへと分化する。シナプスにおける神経伝達は、シナプス小胞の前シナプス膜へ融合を介する神経伝達物質の放出によって達成される。この際、シナプス小胞の融合は、前シナプス膜上のN型電位依存性Ca^<2+>チャネル集合部位(アクティブゾーン)に限局されており、そのために超高速度分泌が可能となる。本研究では、神経伝達の基盤となるアクティブゾーン分子構築に注目し、特に、シナプス小胞融合機構及び細胞接着分子に焦点を絞って解析した。また、シナプス形成過程で段階的に付与されるシナプスの特殊な機構と、それに関与する分子種および分子構築との関連も合わせて解析し、次の様な成果を得た。 1.シナプス小胞融合機構に関して、Syntaxinと結合する新規の蛋白質Tomosinを見いだした。Tomosinは、PC12細胞で過剰発現させると神経伝達物質の放出を抑制することから、小胞融合を調節する重要な要素であると考えられる。 2.細胞接着分子に関して、シナプス接着部位と上皮細胞間接着部位との両者に共存する新規の蛋白質Afadin, AF-6を見いだした。AfadinはActin-Filamentと結合し、Adherens Junction (AJ)に局在していることからCadherin/Catenin系と同じく細胞間接着機構の主要分子である可能性が高いと考えられ、シナプス形成機構への関与が強く示唆された。 3.神経系に特異的に発現し、シナプス接着部位に局在し、Actin-Filamentと結合する新規の蛋白質Neurabin Iを見いだし、本蛋白質が神経細胞の神経突起形成に重要な役割を果たすことを明らかにした。また,Neurabin Iと相同なアミノ酸配列を持ち、神経組織にも非神経組織にも発現している新規の蛋白質Neurabin IIをも見いだした。Neurabin IIは、神経組織では、シナプス接着部位と軸策に、非神経組織では上皮細胞間接部位に局在していた。 4.神経成長円錐におけるシナプス小胞融合機構の機能局在に関して、シナプス小胞蛋白質Synapsin I, Synaptotagminが、再生神経成長円錐の小胞および形質膜に局在することを明らかにした。 5.再生神経成長円錐にCadherin/Catenin分子を証明し、本分子が神経成長円錐を束ねることを明らかにした。
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