研究課題に関連して行なった2項目の研究について、本年度には以下の進展・成果が得られた。 1 網様体神経機構の作動原理の解明:本研究では無拘束状態の動物から自発運動時における網様体神経細胞活動を慢性的に導出・記録することを目的とした。この様な導出・記録法を用いた実験系は国内の研究機関では未だ確立されていない。このため本年度は導出・記録システムおよび無拘束実験動物標本の確立に主眼を置いて研究を展開し、以下の3点について進展が得られた。(1)多点同時導出用電極マニュピュレータの開発・製作により神経細胞活動の多チャンネル導出・記録が可能となった。(2)本年度の科学研究費補助金の主たる備品であるデータ計測・処理システム(一式)の導入により、多チャンネル記録されたデータの処理の効率化および精度の向上が可能となった。(3)無拘束状態の動物(ネコ)に報酬を用いた訓練を行ない、前肢の指標到達運動および歩行運動の発現に関する条件付けが完成した。 2 網様体入出力ネットワークの構築原理の解明:内側橋・延髄網様体は細胞構築学的に巨大細胞性(FTG)および大細胞性網様核(FTM)の2つの核群に分類される。本研究ではこれらの核群から脊髄へ下行する網様体脊髄路軸索の脊髄内支配様式を明らかにすることを目的とした。このためにPHA-L法を用いて網様体脊髄路軸索の脊髄内分枝様式について単一軸索レベルでの解析を行なった。この結果、次の特徴を明らかにできた。(1)FTG核由来の軸索の多くは多髄節にわたり複数の軸索側枝を分枝していた。これらの軸索側枝は脊髄の介在細胞層を中心に支配していた。(2)FTM核由来の軸索の多くは各髄節で1本程度の軸索側枝を分枝していた。これらの軸索側枝は介在細胞層に加えて四肢筋支配の運動細胞層も支配していた。この研究成果については、国際脳研究機構(IBRO)の第4回国際会議(平成7年7月・京都)において発表した。
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