研究概要 |
本研究では、材料と生体との相互作用、特に非特異的相互作用について細胞の遺伝子レベルで理解することを目的として、材料と接触した細胞のメッセンジャーRNA(mRNA)の発現を評価する。平成7年度において逆転写酵素を用いたポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR法)を用いた評価法が有用であることを示した。平成8年度は細胞のごく初期の認識に関係していると考えられているmRNA群の発現をスクリーニングし、非特異的相互作用認識の引き金となる機構を推察した。検討したmRNA群は、熱ショックタンパク質(HSP)のmRNA、発癌遺伝子群と発癌遺伝子群である。これらの遺伝子群は細胞の中でも最も初期に発動することが知られており、また発癌遺伝子発現評価については、医用埋植用材料についての長期の安全性評価にも有用であると考えている。具体的には以下に示す。 1)平成7年度で取り上げた代表的な高分子材料上での熱ショックタンパク質(HSP)のmRNA発現を検討した。対象としたHSPは、HSP90,HSP60,HSP70である。これらのRT-PCR反応の最適化を行い、材料との接触時間やタンパク質発現との比較を行った。 2)発癌遺伝子の発現評価 発癌遺伝子であるras、fosおよびmyc遺伝子に注目し、材料に接触した細胞中でのこれらの遺伝子の発現をRT-PCR法で評価するための条件設定をおこなった。
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