研究概要 |
1.ハイブリッド型リポソームの創製および物性評価 平成7年度において、腫瘍細胞に対する抗腫瘍効果が明らかとなったハイブリッド型リポソームのミセル分子(ポリオキシエチレンアルキルエーテル,C_m(EO)_nm=10〜14,n=4〜23)の疎水部および親水部をさらに幅広く変化させ、サイズを動的光散乱法により、膜流動性を蛍光偏光度測定により評価したところ、(リジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)/10mol%C_<12>(EO)_8およびDMPC/10mol%C_<12>(EO)_<12>ハイブリッド型リポソームはそれぞれ80〜90および120〜130mmの直径で約3週間にわたり安定であった。また、(2)DMPC/10mol%C_<14>(EO)_n系では、n=8において、約80nmの直径で長期間安定であることが明確となった。次に、膜流動性は(3)DMPC/10mol%C_<12>(EO)_n系では、nが4〜12へと増大するに伴い増大し、DMPC/10mol%C_<14>(EO)_n系では、nが4〜8へと増大するに伴い増大した。 2.リンパ腺癌に対するハイブリッド型リポソームの抗腫瘍効果 DMPC/10mol%C_m(EO)_nハイブリッド型リポソームのBリンパ腫瘍細胞に対する制癌効果において、m=12のときn=8,12およびm=14のときm=6,7,8の場合に顕著な増殖抑制効果(91〜96%)を示すことが明らかとなり、膜流動性と増殖抑制効果との相関性が示唆された。 3.ハイブリッド型リポソームの制癌メカニズム ハイブリッド型リポソーム添加直後の癌細胞の蛍光顕微鏡写真から、ホスファチジルコリンおよびミセル分子のみでは癌細胞に全く取り込まれていないが、ハイブリッド型リポソームの場合は癌細胞に膜融合によって取り込まれていることが明らかとなった。ハイブリッド型リポソームの(1)癌細胞への融合→(2)癖細胞膜の物性(疎水性,流動性など)が変化→(3)細胞膜に存在するレセプターのコンホメーション変化→(4)増殖因子のレセプターへの不適合、の機序で細胞増殖が抑えられるとの考え方を提案した。
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