研究概要 |
陽イオン交換樹脂粒子表面上に,BZ振動反応を限定させることにより,離散型の化学振動子を得た。これは活性を内在した非平衡要素系の1つである。この結合振動子系は,CSTRを基本にした結合振動子系と比べて,極めて特異的であることが分かった。1:nまたはn:1(n:整数)の引き込みモードが最も安定であり、結合状態についての相図の広い領域を占める。特に、1:1と1:2(又は2:1)モードの間の転移に際しては,必ず不規則振動が現われることが見い出された。パワースペクトル、3次元再構成アトラクターそして最大リヤプノフ指数を調べ、観測された不規則振動はカオスであると結論した。3要素間結合の場合には,結合強度に依存して、時計回りの回転モード、反時計回りの回転モード及びそれらの間の移り変わりが観測された。回転モードは、2要素結合の場合の1:1モードに対応した状態であり、その出現は、結合イジングスピン系に見られるようなフラストレーションに対する埋め合わせ効果に起因していると考えられる。 更に、要素間の協力性と外的擾乱との競合によって、如何なる相転移を引き起こすかを調べた。このシステムの振動反応には多くのイオンが介在しており,電場によって種々の自己組織化現象を誘起することができた。電場の周波数に対する化学振動子の固有振動数の比と電場強度の関数として振動状態に関する相図を得た。その特徴は、結合振動子系の相図と酷似している。即ち、(1)1:nまたはn:1の引き込み状態が、相図の広い領域を占め且つ安定である,(2)低電場領域では,これらの安定領域の間の境界領域でファーレ-の樹状構造に従ったた高次の引き込みや準周期振動が現われる,(3)1:1と1:2(又は2:1)の間の転移は,必ずカオス状態を経て起きるなどである。
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