研究概要 |
エンドセリンファミリーは3種類のリガンド(ET-1,ET-2,ET-3)と2種類の受容体(ET-A,ET-B)か なる生体内調節系で、血管収縮の他、細胞増殖作用等多彩な生物作用を惹起する。これらの生 作用はリガンドのみならず受容体の発現が調節されていると考えられるが、今回我々は、ヒトE A受容体遺伝子の転写調節、およびalternative splicingによる転写産物の差に関して検討を加えた 1)5′隣接領域の転写調節に関する検討 ヒトET-A,ET-B受容体遺伝子の5′隣接領域の解析をすると両遺伝子ともTATAboxは存在せず いずれも転写開始点上流にSP-1結合部位(GCbox)が認められた。その他GATAモチーフ、APRR Ebox,CRE-like sequenceなどのcis-elementが存在した。 また、ヒトET-A遺伝子の5′隣接領域をリポーター遺伝子に結合しルシフェラーゼアッセイ て検討すると、上記のコンセンサス以外のET-A受容体遺伝子の正の転写領域ETA-P1を同定した このフュージョン遺伝子を血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、COS7細胞にトランスフェクシ ンしても、この領域は同様に正の転写調節を担っており、この領域はET-A遺伝子の基本的な転 調節を行っていると考えられた。さらにこの領域が細胞内で実際に働いていることをさらに確 するために、上述したETA-P1に相同的な配列を4個直列に連結したDNA断片をDecoyとして 滑筋細胞にトランスフェクションすると内因性のET-A受容体mRNAは経時的に減少コントロ ルの30%となり、このETA-P1領域が細胞内で正に転写調節していることが確認された。 2)alternative spliceによる転写産物の解析 ET-A遺伝子には8個のエクソンからなっているが、RT-PCR法とRNAaseプロテクションアッ イにて、エクソン3がsplice outされているcDNAとエクソン3と4の両方がsplice outされてい cDNAの少なくとも3種類のcDNAが存在すること、それらが各種の組織に分布していることを 認した。
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