研究概要 |
ウニ胚の細胞運命決定の分子機構を理解するうえで,鍵となる3つの因子,小割球決定因子,小割球から出される内胚葉誘導因子,リチウムイオンが活性化する因子,を明らかにするため,2つのアプローチで実験を行なった。 一つは,ウニ16細胞期胚の割球をエルトリエータによって分離し,小割球とその系譜細胞に特異的に発現する遺伝子,あるいは中割球系譜細胞においてリチウムイオン依存的に発現する遺伝子を,差次的に検索することである。具体的には,differential screening法,differential display法,subtraction PCR法を試みた。differntial display法によって小割球とその系譜細胞特異的に発現すると思われる約120の遺伝子断片を単離した。それらの断片に対して,各割球とその系譜細胞から抽出したRNAを逆転写したcDNAをプローブとして,サザン法によって二次スクリーニングし,10遺伝子断片を得た。また,subtraction PCR法によって,小割球とその系譜細胞特異的に増幅されるcDNA断片を3種,リチウムイオン依存的に増幅されるcDNA断片1種を検出した。これらの遺伝子の胚における発現の局在性を,in situハイブリダイゼーション法によって確認する作業を進めている。 一方,鍵となる因子を,その活性を追うことによって単離するexpression cloning法も試みた。現在のところ,その活性を検出していないが,小割球から出される内胚葉誘導因子は,これまで考えられてきた胚期(16-64細胞期)よりもはるかに遅い孵化胞胚期に発現することが明らかになった。
|