研究概要 |
潮下帯及び潮間帯群集構造:動物相は潮間帯が圧倒的に豊富であり,潮間帯と潮下帯では優占種はまったく共通せず,共通して出現する種類も少なかった.潮間帯では(付着珪藻・バクテリアを食べる)藻食性の貝類が個体数・重量ともに圧倒的に多かった.潮下帯では貝類は重要であるものの,圧倒的ではなくなり,棘皮動物,甲殻類が相対的に多くなっていた.また,食性では肉食者やろ過食者の割合が増加していた.潮下帯のベントス捕食者としてはイトマキヒトデ,巻貝のヒメヨウラク,ヤドカリ類,オウギガニ類が見られたが,前2種を除けば密度は非常に低かった.このため,潮間帯に侵入するベントス捕食者としてはイトマキヒトデに注目し,垂直移動調査,野外捕食行動観察を実施した.その結果,イトマキヒトデは潮間帯への侵入は稀であり,また海藻食を主としているため,潮間帯群集への捕食圧はほとんど無いことが示された. 潮下帯生物による潮間帯への侵入:潮間帯での潜水観察により,魚類のカサゴ・ササノハベラ・クサフグによる潮間帯ベントスの捕食が確認された. 魚類の胃内容観察:満潮時に低潮線近辺で刺し網を仕掛けることにより,潮間帯に侵入した魚類を効率的に採集し,その胃内容を分析した.カサゴ・ササノハベラの両種が多数を占めた.カサゴはヒライソガニを中心とした甲殻類,ササノハベラは貝類を主に多くのベントスを食べていた.潮下帯において採集したカサゴ・ベラも潮間帯のベントスを食べていることが確認され,潮間帯がこれらの魚の重要な餌場となっていることが示された.
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