研究概要 |
半導体超LSIデバイスの微細化は,その高集積化にともない急ピッチで進んでおり,近い将来,量子効果や単一電子現象などの特異な現象がSiデバイスでも起こることが期待されている.本研究は,将来のLSIへの応用を目指してSiの超微細構造デバイスを作製しその量子輸送現象の基礎研究を行うことを目的としている. まず,Siの微細加工に関しては,リソグラフィに依らず制御性の良いSi量子細線作製プロセスの開発に成功した.本プロセスでは,Si結晶の面方位に依存する異方性エッチングと選択酸化をSOI基板に適用し,10nm以下の線幅を達成した.線幅は,SOI基板のSi膜厚のみに依存しリソグラフィに依存しない.また,結晶の面方位を出すことで,極めて均一に細線を形成できる.次に,上記プロセス等を用いて二重ゲートMOSFET及び量子細線MOSFETの作製を行った.チャネル幅は10nm以下,チャネル長は約100nmである.ドレイン電流のゲート電圧依存性を測定したところ,77Kで大きな振動が観測され,この振動は室温でも観測された.種々の測定から,この振動は単一電子現象に起因するクーロンブロッケード振動であるとの結論を得た.また,さらに低温では,振動が複数の鋭いピークに分裂することから,チャネルが複数の量子ドットに分裂していることを明らかにした. 以上のように,本研究ではSiデバイスにおいて明瞭な単一電子現象の観測に成功し,将来の単一電子現象のLSIデバイスへの応用に関して重要な指針を得た.
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